政府は東京電力ホールディングス(HD)福島第1原子力発電所で保管されている放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出を24日に開始する方針を決めた。岸田文雄首相が22日午前、官邸で開かれた関係閣僚会議で表明した。
ブルームバーグより。
去る20日、岸田首相は福島第一原発を視察し、21日に全漁連の会長と面会した。
しかし、せっかく福島県を訪れたのに、福島県の漁連の方とは会っていない。
大反対のフルボッコに遭うところを放送されるのを避けたのではないかと誰だかいっていたけども、恐らくそうなのだろう。
原発事故から10年以上経っており、当初から処理水の問題は分かっていたはずなのに、結局放出ありきで、最後ゴリ押ししたという印象しかない。
●スリーマイル島原発事故とサンオノフレ原発
ラジオの辛坊治郎ズーム(辛坊治郎さんは夏休みで、堀潤さんがホストを務めた回)を聞いていてなるほどと思った。
スリーマイル島原発事故。
スリーマイル島原子力発電所事故(スリーマイルとうげんしりょくはつでんしょじこ、英: Three Mile Island accident)は、1979年3月28日、アメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所で発生した重大な原子力事故。スリーマイル島(Three Mile Island)の頭文字をとってTMI事故とも略称される。
原子炉冷却材喪失事故(Loss Of Coolant Accident, LOCA)に分類され、想定された事故の規模を上回る過酷事故(Severe Accident)である。国際原子力事象評価尺度(INES)においてレベル5の事例である。
ウィキペディアより。
スリーマイル島原発事故でもトリチウムを含む処理水が問題になり、当初河川に流す方法が検討されたが、下流住民の反対で蒸発させた。
サンオノフレ原発の廃炉の記事(東洋経済オンライン)
スリーマイル島原発事故の処理水問題やサンオノフレ原発の廃炉は、共に住民が関わり方法を決定している。
原発側も情報を開示し、意見交換を行ったという(もちろん喧々諤々あったのだろう)。
翻って福島第一原発を見てみると、10年以上あったにも関わらず漁業関係者や住民を含めて処理方法まで含めて検討したという話はついぞ聞いたことがない。
有識者が集まって決めたことを、決まったから納得しろと説明しただけだろう。
納得できないと、科学的に安全なのに納得できないなんて科学リテラシーのないやつだと分断される。
頭で分かっていても感情で納得できないという事は往々にしてあることだ。
もちろんその逆もあるわけだけども。
日本はトリチウムを含む排水は諸外国も出しており、問題はないとしているが、通常運転で出る排水と、福島第一原発の処理水は別物である。
通常運転で出てくる排水はポンプや弁からの漏洩、サンプルラインや蒸発した冷却水に含まれるもの。
然るべき処理をして排水する。
一方福島第一原発は溶け落ちた燃料棒に直接触れてセシウムやストロンチウム等放射性物質を含むものであり、それをALPSで処理し、残ったトリチウムを含んだ水となる。
現在処理水タンク溜まっているものの約7割は処理を優先した為にトリチウム以外のものも含んでいるので(処理途上水)、再処理が必要となる。
薄めて海に流すにしても、30~40年近くかかる長丁場となる。
処理水を100倍に希釈(稼働中の原発のトリチウム基準の1/40、WHOの飲料水水質ガイドラインにおける飲料水に含まれるトリチウム指標の1/7)する理由は、「規制基準を満足するだけでなく、現在実施している地下水バイパスやサブドレンの排水中のトリチウム濃度の運用目標値(1,500Bq/L 未満)と同じレベルまで海水で大幅(100 倍以上)に希釈することとしている。」としているから(8ページ目)。
1500ベクレル/リットルの根拠は、「トリチウムは地下水に移行しやすいから」とある(3ページ目)。
これを見る限り、ちゃんと数値を満たしていれば問題はないと思われる(あと何十年も満たし続ける必要がある)。
ただ、ここに至るまでに、情報の開示(当初処理水にトリチウム以外のものが含まれていることを隠そうとした経緯がある。)と漁業関係者の方々と会合を重ね、じゃあ問題ないねと双方納できたのであれば、土壇場で反対されたり、海洋放出ありきで何をいっても無駄、なんてことにはならなかったのではないだろうか。
早い段階でやっていれば海洋放出以外の処理方法も取れたのではないだろうか。
科学的根拠を提示した上で福島漁業関係者の方々がちゃんと納得したのであれば、風評被害は起きない、起きても軽度だと思う。
でも、政府のやったことは、もう決まったから納得しろ、風評被害が出たら補償する、と、結局お金で片を付ける方法を取った。
これは怠慢ではないだろうか。